日本人は、古くから食に対して色彩を楽しみ、香りを楽しみ、味を楽しむ。五感のすべてで食を堪能する。作り手への感謝を忘れずに一食一食を大切にする素晴らしい文化が和食にはあります。また「青黄赤白黒(しょうおうしゃくびゃっこく)」といって色使いの基本があり、料理やお皿にさまざまな色を取り入れることで色鮮やかになり、食欲が増すとともに栄養のバランスをとることもできます。
そんな色合いに敏感な日本人は、店頭で食品が並んでいるときも無意識のうちに、よりキレイないもの、色鮮やかなもの、新鮮そうに見えるものを選んでいるのかもしれません。
そこで活躍するのが亜硝酸ナトリウム。
亜硝酸ナトリウム(亜硝酸Na)は、ハムやベーコン、ソーセージ、いくら、たらこなどの発色剤として使用されて、食品に透明感を出して色合いを鮮やかにしてくれます。また食肉中のヘモグロビンやミオグロビンと結合して、お肉の新鮮な赤色を保持してくれる効果もあります。
ただネットで“危険な食品添加物”などと検索すると必ずといっていいほど出てくる添加物です。
ではなぜ亜硝酸ナトリウムが危険と言われるのか、また危険なのになぜ使われるのかをみていきたいと思います。
【発がん性物質生成】
亜硝酸は、動物性たんぱく質が分解してできるジメチルアミンと反応することでジメチルニトロアミンという発がん性物質を生成してしまいます。またWHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、亜硝酸塩等を5段階で上から2番目のグループ2A(ヒトへの発がん性については限られた証拠しかないが、実験動物の発がんについては十分な証拠がある)としています。
【劇物指定】
亜硝酸ナトリウムは、毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。一般成人男性が2g摂取すると死に至る可能性があります。
では、これほどまでの劇物をなぜ食品に使うのか。
一つの理由は、冒頭でも述べた食品の色彩を鮮やかにあるため、時間が経過しても食肉の新鮮な赤色を保持するためです。
もう一つの理由は、腸詰ソーセージ(燻製肉)などで発生するボツリヌス菌による食中毒を抑えるためです。
ボツリヌス菌は、自然界に存在する最も毒素の強い細菌と言われており、一般成人男性が0.7~0.9μg摂取すると死に至ります。1gで約100万人を死に至らせることから生物兵器としても研究が行われているほどです。
このような自然界で最も毒素の強いボツリヌス菌の増殖を抑える静菌効果があるものが、亜硝酸ナトリウムなのです。
ボツリヌス菌の食中毒を抑えるための亜硝酸ナトリウム。しかし亜硝酸ナトリウムには発がん性物質を生成する可能性がある。食の安全を守るのは、本当に一筋縄ではいかないようです。
現在では、大手スーパーやオーガニックスーパーなどで衛生管理の徹底と加工技術の向上で開発された亜硝酸ナトリウムを使わない「無塩せき」のハムやソーセージが販売されています。
食品の問題は意外に複雑なものが多く、見える部分だけで判断するのではなく、自分の身体に直結する問題ですので、理由をしっかりと理解した上で選択する必要があると思います。亜硝酸ナトリウムが使用されている食品を選ぶのか、亜硝酸ナトリウムを使用しない「無塩せき」のものを選ぶのか、それとも加工肉を食べないという選択肢を選ぶのか、それは消費者の自由です。
日々の食の選択は、将来の自分の身体を作ります。少しでもこのブログが、ご自身の健康のそのきっかけになれば幸いです。
「加工食品診断士のきまぐれブログ」http://oridge.livedoor.blog/
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